明治の森高尾国立公園と圏央道計画
どんぐり日誌
通称『圏央道』は、正式名称『首都圏中央連絡自動車道(しゅとけんちゅうおうれんらくじどうしゃどう)』といい、神奈川県横浜市を起点とし、千葉県木更津市を終点とする、東京都の中心部から概ね半径40~60kmの位置を環状に結ぶ、総延長はおよそ270kmの高速道路です。
圏央道は、東京郊外の都市と都市を結び、交通の流れをスムーズにすることを目的として計画されました。最初の開通は1988年。完成予定は2015年です。
圏央道の東京分は八王子市南浅川町を起点に、青梅市今井までの全長22キロで多摩丘陵を横断するためトンネル部分の多い設計となっています。
圏央道計画のうち、八王子JCT~あきる野IC(2007年6月23日15時開通予定)は、明治の森高尾国定公園を串刺しにするルートのため、『高尾山天狗裁判』と言われる訴訟が、2000年10月25日に起こされました。
圏央道に賛成の人も、反対の人も、ぜひ最後まで読んで下さい。
主観で記述する箇所があります。不快に感じられる方がおりましたら申し訳ございません。
高尾山は、私が小学校4年生のときに遠足で初めて登りました。
遠足のときは、京王高尾山口側に観光バスで行き、ケーブルカーに乗って山腹まで登りました。
そこからは車も通れるコンクリートの道を延々と登り、薬王院を通り頂上まで登りました。
小学生ながらに、道がコンクリートの山なんて山じゃない!!と思いました。
それから高尾山はなんとなく避けるようになっていました。
そして、自然環境に興味を持った私は、地球環境系の専門学校へ入学。
そこの初めての宿泊実習が『高尾山』でした。
なぜ、あんなコンクリートの山が実習地なんだと思いました。
この学校は何を考えているんだと、正直思いました。
しかし、遠足と全く違うものを目撃することになったのです。
行先は、薬王院やケーブルカーがある「表」ではなく、自然環境豊富な「裏高尾」と呼ばれる場所だったのです。
JR高尾駅からバスに乗って25分ほど。「小仏行き」に乗り「日影」で降ります。
「日影沢園地」というキャンプ場が、3泊4日の実習生活の拠点となりました。
日影沢園地から、頂上に向かう道に「いろはの森」という学習ルートがあります。
いろは…ん から始まる樹木が全てある、というのがルート名の由来です。
別名や俗名なども含むんですが(そうでなければ「ん」から始まる名前なんてないですし)
高尾山の中でも一番傾斜がキツイルートです。
それでも、豊富な樹木や草花、そして野鳥たちには癒されました。
いろはの森を抜けると、ケーブルカーに乗ってきた人たちが通る道と合流します。
その合流地点の尾根を境に、北側と南側で大きく生態系が異なるんだと、先生は言いました。
北側に温帯林。南側に暖帯林。
温帯林は、主に夏緑樹林(いわゆる夏に葉をつけて活動し、冬には落葉する木々)で構成された森のことで、ブナ・ナラ・イタヤカエデ・トチ・シオジ・ケヤキなどが代表的。
暖帯林では、カシやシイなどの常緑広葉樹で構成される森のこと。
「広葉樹」であることでは大差はないけれど、森に住む鳥や小動物にとっては大きく異なる。
たった599mしかない低山の高尾山は自然の宝庫です。
トンネルが掘られ、車が多く行き交う場所になったなら、生態系に与える影響は計り知れません。
以下、「高尾通信」サイトからの引用です。
600メートル程度の低山ですが高尾山は自然の宝庫です。高尾山原産の植物だけでも、なんと40種以上を数え、千数百種の植物が自生しています。この高尾山にトンネルが掘られれば地下水脈は分断され、自然に与える影響は計り知れないものがあります。
高尾山の植物相の特徴として、暖帯、温帯両帯の植物が共存していることが広く知られています。そのほか個体数の少ないことが特徴としてあげられています。世代交代が激しいので特に草木類にとっては、生育適地となる環境そのものの維持が最重要となります。
高尾山に産する貴重植物として100種ほどがありますが、そのうち9割以上の種が1株または5株以内しかこれまで発見されていないのです。圏央道の予定地付近、高尾山の北側斜面にはスギ、ヒノキ人工林下にしだ類が多く産している。
またこれに混じり高尾山の貴重植物であるツルギキョウが散生しています。ウラジロマタタビ、キジョウラン、レモン、エゴマ、トラノオジソなどの植物が、今回の圏央道に伴う調査から続々と発見されています。しかし、計画ではトンネル坑口が設置されるもので、これにより植物の生育地は大幅に狭められるか奪い取られる可能性があります。
この他、蝶類(ジャノメチョウ、ウラキンシジミ、シジミチョウなど)、哺乳類(カワネズミ、ムササビ、ヤマネ、カゲネズミ、キツネ、テン、ハクビシン)鳥類(ミサゴ、オジロワシ、コノハズク、コマドリ、アカショウビン、ブッポウソウ、など)両生類(イモリ、ヒダサンショウウオ、モリアオガエル、カジカガエルなど)など貴重な自然とともに育った彼らの棲家が奪われようとしています。裏高尾の改変は減少への道をたどることは疑うすべもありません。
これだけ、自然の宝庫である高尾山も、国土交通省には「交通の流れを潤滑にするためには止むを得ない犠牲」なのでしょうか。
なぜ、これだけの自然を犠牲にしなければならないのか、私には理解できません。
ちなみに、私は圏央道を作ることには反対ではありません。
神奈川県の北側に住んでいる私としては、神奈川の南側に抜けるには必ずどこか渋滞にぶつかります。東名高速道路まで、一直線でいくことができるならどれだけ楽か。
そして、その周囲の大気汚染がどれだけ改善されることか。
「利点」なんて十分分かっています。
開発なくして、経済発展はない。経済発展なくして、環境保護はありえない。私はそう思っています。
でもだからといって、犠牲にしていい自然はありません。
「環境アセスメント」とは、開発と保護を共存させるための調査でしょう?
どうして、他のルートを考えることが出来ないのか。
計画を変更することが出来ないのか。
それが唯一の謎です。
・・・この他のルートという話題を振ると、他方では「高尾の自然さえ守れれば、他はどうでもいいのか」という話をする方がいます。
なにもそんなことを言っているのではありません。
高尾山と隣接する「陣場山」。高尾を掘らずに陣場山を掘る、という話になればそれはそれで反対です。
そんな単純な話じゃないはずです。
もう少し大回りをさせるとか、小回りさせるとか、その気になればいくらでもやり方なんてありそうなものなのに、どうして計画を真っ向から突き進めることしか考えないのでしょうか。
先日行われた裁判で、高尾住民らは完全な敗北を期しました。
NHKを見ていたら、知っている人が原告で記者会見をしていました。
その方にお会いしたとき、すでに闘い始めて10年近く経過していると言っておりました。
それからさらに10年近く経っています。
あんな大きなジャンクションが作られていく最中で、まだがんばってくれていたんだと思いました。
住民の不安、不満、叫びを思うと、国に対し憤りを感じ、切なく悲しい気持ちになります。
「チーム・マイナス6%」
それはもちろん大切なこと。
でも、それだけじゃなく、自然を大切にする気持ち。
きれいな森をきれいなままに。きれいな川をきれいなままに。
汚い空はきれいに。汚い海はきれいに。
次の世代を担う子供たちが大人になるころの未来、今より汚くならないで欲しい。
いなくなる動物や植物がいないで欲しい。
それこそ、国を挙げて取り組んで欲しいと思います。
感情が露に出る内容で申し訳ありませんが、熱い気持ちを分かって欲しい。
一人でも多くの人に、
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